【記事】支援学級・学校へ押し出される発達障害の子たち

公開日: 2016年6月1日 ADHD 記事 自閉症 発達障害


2016/5/24dot.の記事から。
「「就学時猶予」の適用。同じ年に生まれた子どもより成長や発達が遅れる子どもたちのために、小学校に通う年齢になっても、発達の程度によって学校に通わないことを認める制度」
こんな制度もあったんですね。初めて知りました。我が子にこれを適用させられるのか、した方が良いのかは分かりませんが、こんな話は誰からも教えて貰えませんでした。
「ひとりの子に特別な対応をしてもらう際、クラスでその子が孤立しないようにする配慮が必要。」
とありますが、本当にそうですね。特別にされているということでいじめられても困るので。

発達障害を抱える子どもたちは、小学校入学でまた壁にぶつかる。診断を受ける割合が増える一方、学校の支援態勢は不十分なケースも多い。教育現場、医療、親たちの手探りの状況が続いている。
 知的な遅れがほぼない「自閉症」と「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」と、複数の発達障害の特性がある、愛知県在住のカズキくん(仮名)は、小学1年生の秋になり母親に訴えた。
「こころが破れる」
 カズキくんは教室の騒々しさや児童同士のいざこざが絶えないように感じられる日常に耐えられなくなったというのだ。
 カズキくんは1歳10カ月で「自閉症の傾向あり」と診断された。地元の公立小学校に入学した当初は通常学級に在籍し、苦手な国語と算数の授業だけを特別支援学級で受けていた。
 毎日片道30分の道のりを通学するのはやっとで、時には遅刻することもあった。じっと座っていられず教室を飛び出すことも度々あった。それでも比較的大人しい子であり、やんちゃな子たちのいじめのターゲットになりやすかった。コミュニケーション上のすれ違いで、級友とのトラブルもあった。
 カズキくんの母親は病院と学校に相談し、1年生の3学期からは支援学級に転籍することに決めた。母親は言う。
「世間一般で言われる『普通でいること』が、障害特性のある子にとってどれだけ大変なのか。実際に学校に通わせてわかったことがたくさんあります」
 文部科学省の2012年の調査では、公立の小・中学校の通常学級に発達障害の可能性のある子が6.5%いると推定されている。発達障害などのため、通常学級で学びながら一部の授業を「通級指導」で学ぶ公立の小中学生は、全国で9万人余り(15年度)と過去最高にのぼったことも、文科省から発表された。対象者の内訳は、発達障害に含まれる「ADHD」(16.2%)、「自閉症」(15.7%)、「学習障害(LD)」(14.6%)が大きな割合を占めた。
●支援学校へ押し出し
 発達障害のある児童が増える背景には、連載の初回(「理解が追いつかない「発達障害」と生きる 医師も親も迷っている」)で伝えたように、「早期発見」が加速化し、小学校の低学年までに診断されたり、何らかの支援を受けたりしている子どもが急速に増えているという側面がある。だが、学校の対応は追いついていない。
都内の小学校の支援学級に通っていた男児は、小4になり支援学級の担任の先生から、「特別支援学校へ行ってください」と強く勧められた。支援学級を置く学校が少ない地域で、定員がすぐに超過する状況が続いているのだ。結局、5年生から支援学校に転校した。男児の母親は本音を語る。
「最近LDやADHD傾向の子どもたちが通常学級に増えてきたうえ、そうした子を先生方が見きれなくなったように感じます。ちょっとした対応で通常学級にいられそうな子どもが支援学級にまわされて、もともと支援学級にいた子たちが支援学校へ。そんな押し出し式の流れにしないでほしい」
 通常学級か支援学級か。どの学校が柔軟に対応してくれそうか。就学前の情報収集や手続きに奔走する親子にとり、小学校入学の壁は厚い。就学を控え選択肢を広げるため、「持ち家を売って別の地域へ引っ越した」という人もいる。自治体ごとに発達障害のある子への対応には温度差もあるのだ。
 例えば、「就学時猶予」の適用。同じ年に生まれた子どもより成長や発達が遅れる子どもたちのために、小学校に通う年齢になっても、発達の程度によって学校に通わないことを認める制度なのだが、かつて対象となっていたのは、身体・知的障害の子らが中心だった。
●嗅覚過敏で給食配慮
『自閉症・発達障害を疑われたとき・疑ったとき』などの著書がある小児科医の平岩幹男さんによれば、就学時猶予に多くの自治体は消極的で、一切認めないところもあるという。
「1年遅らせることによりお子さんが安心して学校へ通えそうならば、行政に認められないと押し切られそうになっても、あきらめずにアピールしてください。医師に意見書を書いてもらうなど、専門家の力を借りるのも一つの手立て」(平岩さん)
 発達障害で言葉や生活動作に心配があった長男(7)を療育により少しずつ伸ばしてきた神奈川県の母親は、「就学時猶予」の制度を使って今春、1年遅れで長男を小学校に入学させた。だが、「認められるまでに相当のエネルギーを消耗しました」。手続きのため教育委員会や相談センターなど複数の窓口をまわり、「猶予は認められない」と電話が来ても、再審査を申し出て、認められた。
 長男は嗅覚が過敏で、海産物と牛乳を一切受け付けない。食べたら吐いてしまう。給食の対応のため、母親は学校の先生に医師の診断書を見せ、アレルギーとは違い、また単なる好き嫌いでもないことを説明した。
●ADHDの薬で副作用
 愛知県大府市では、全国でいち早く発達障害がある児童を対象に個別の教育支援計画を立てている。07年から取り組んでいる「すくすく」の実践だ。縦割りではなく、児童課、福祉課、保健センターなどが連携体制を取り、幼児期から中学校まで、連続的な支援を可能にした。
 入学前の、保育園・幼稚園の段階から計画を作成。小・中学校へと引き継いでいく計画シートには、家庭環境や健康診断の結果、病院の受診歴などを親が記入し、必要な配慮についても伝える。園や学校は、親と相談しながら学期ごとに目標を立て、指導方法を考える。
 同市教育委員会の渡部一夫指導主事は、「すくすく」実践後の変化は、早くから児童の特性に合ったアプローチができるようになったことだという。
「1年ごとに担任が代わる学校現場でも、保護者、他職種・他機関と児童の情報を共有しながら、途切れずに連携できるようになりました」(渡部さん)
 学校生活では、医療と教育現場の連携が必要な局面もある。
 前出の男児を支援学校へ通わせている東京都の母親は、以前男児がいた支援学級の担任の先生から、子どもが落ち着くようにと、ADHD治療薬を飲むよう勧められた。頻繁に言ってくるため、医師に処方してもらうと、男児は食欲が落ちて給食も食べられなくなり、夜も眠れなくなった。母親は言う。
「薬の弊害もありうると知らない先生が医療のことに口を出してくることに、正直驚きました」
 王子クリニック(東京都北区)院長の石崎朝世さんは指摘する。
「効果と副作用との加減があり、ADHDの治療薬は、使うとしても最小限の用量にとどめています。薬で落ち着いたように見えても、ひらめきや豊かな感性まで抑えられ、その子らしさが失われることもあります」
 その子の優れたところ、置かれた環境、薬を使って良かったことと残念だったことなどを把握し、その子をまるごと理解する。そのため、医師は、学校の先生とは親を介して手紙でやりとりし、時には学校に出向くこともあるという。
 周りに合わせ、一見クラスに溶け込んだように見える子でも、ちょっとしたトラブルが絶えず、いじめの対象になることもある。失敗を重ね、高学年になって自分のできなさを理解するようになった子どもが抑うつ状態に陥ることは少なくない。長くひきこもり、不登校になる事例もある。
●保護者含めて会議
 こうした「2次障害」を防ぐために、辻井正次・中京大学現代社会学部教授は指摘する。
「低学年のうちから、子どもができる経験を一つずつ積み上げられる環境づくりが欠かせない」
「うちの子流~発達障害と生きる」というブログで発達障害にまつわる情報を発信しているnanaioさん(48)には、それぞれ異なるタイプの発達障害と診断された長女(小5)と長男(小3)がいる。長女は通常学級に、長男は支援学級に在籍。通常学級に通う長女のことは、親と担任の先生、特別支援コーディネーターの3者が学校で定期的に集まり、「ケース会議」を開いて対応策を話し合っている。「ケース会議」は保護者抜きで行うことも多いが、nanaioさんはあえて保護者も含めてもらった。
●褒めの見える化で改善
 長女は漢字一つを書くのにも、人一倍時間がかかった。字は汚く、繰り返す作業が苦手。学校では、きれいに書くことを義務に感じないよう、きれいに書けたときに星マークをつけてためていく、「褒め」の見える化方式を導入してもらった。先生の提案もあり、長女だけ特別扱いにならないよう、星マークをためる方式を、クラス全員にも導入することになった。
 長女は叱られ続けた頃とは打って変わり、「今日は星印を◯個もらえた」と報告してくるように。小3から続けてもらい、最近では文字がきれいになった。
 神奈川県茅ケ崎市で学習障害の支援活動「ことばと読み書き すーふ」を実践する言語聴覚士の沖村可奈子さんは言う。
「ひとりの子に特別な対応をしてもらう際、クラスでその子が孤立しないようにする配慮が必要。その子の段差を小さくすることが、クラスみんなにとってもいいことにつながるよう、先生がコーディネート力を発揮してくれるとうまくいきます」
 発達障害・グレーゾーンの3人の子どもを育ててきた大場美鈴さん(41)は、自身の経験から、「学校との交渉は、粘り強く」とアドバイスする。
 小5の長男は、発達障害の一つの「自閉症スペクトラム」の診断と、ADHD、LDの傾向があり、漢字の書き取りや板書をノートに写すことが苦手だ。小4の頃から学習の内容が複雑になり、家庭で補う努力だけでは乗りきれなくなった。そこで4月から支援学級に転籍。「iPad」を学校に持ち込んで、学習の補助道具として利用するようになった。
iPadの導入は大場さんからの提案だった。板書を写すことができない時にカメラ機能を使える、うっかり防止にリマインダーを使える、検索できる漢字アプリなどを駆使すれば、確認作業の時間が短縮できる分、高学年ならではの難しい課題に集中して取り組める……とメリットがいくつも浮かんだ。
 ただし長男が通う公立小では導入の前例がなかったため、まずは希望を何度となく学校へ伝えた。そのうち、特別支援コーディネーターの先生も、メディア導入の先進事例を調べて前向きに検討してくれた。話し合いの席では、大場さんは実際に導入した場合の利点をアプリを使って見せ、「視覚的に、具体的に」学校側に示し、最終的に学校の理解を得ることができた。
 東京大学先端科学技術研究センターの中邑賢龍教授は言う。
「彼らのユニークな生き様や個性を認め、そのよさを殺さないこと。もっと柔軟な教育の選択肢をつくって、彼らに適した学習の機会を与えていくこと。本来はそういうところからイノベーションが生まれるんじゃないかな。発達障害の子たちを『普通にしよう』という発想を捨てないと」
●正解なし、KYで◎
 中邑さんらは、14年から始まったプロジェクト「ROCKET」で、ユニークな教育の実践を行ってきた。全国から集まったのは、発達障害などで学校環境に馴染めず、不登校になったり、いじめにあったりした小・中学生だ。高い知能指数を持ちながらも、字が書けず読めない子、特定の分野に関しては大学生やプロ並みの知識を持っているのに、対人コミュニケーションが苦手な子、さまざまだ。
 例えば、イカを解剖して食べる、「イカスミのパエリアづくり」の授業では、イカのスミ袋を破らずにイカスミを取り出すこと、美しく盛り付けることといった課題を与えた。学校の授業と違い、教科書も時間制限もない。
 正解はなく、空気など読まなくてオッケー。本気じゃなければ叱咤されるが、彼らが否定されることはない。子どもたちの作品は、一つとして同じものはない。
「自分だけが変だとなると 『どうして自分は……』とネガティブ思考になる。だけどこういうおおらかな体験を積むと、『あ、俺、大丈夫だ』という気持ちになるのかな。なかには不登校だったけれど、もう一度学校に通い始めたという子もいる」(中邑さん)
 苦しさを抱える彼らこそが、日本の義務教育のシステムに風穴を開ける存在なのかもしれない。

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